年末のご挨拶。

なんか今年は色々と寂しい年になりました。
様々な事が去年から今年にかけて、「あそびにいくヨ!」「疾走れ、撃て!」の二作品を完結させ、私生活でも仕事でも様々な事が終わり、「リラム~密偵の無輪者~」「エルフでビキニでマシンガン!」など、色々新しく始めることとなりました。
楽しいこともあればキツいこともありますが、ここを抜けなければ次へいけないと思って頑張っております。
そんな今年でも嬉しいこともありました。これは全て読者の皆様のおかげです。
来年も「はじめる」ことを続けねばならないので、まだまだドタバタしてるとは思いますが、来年からは今年一年の仕掛けが前に進む方向になるように、と祈っております。
喪中ですので新年の挨拶は出来ませんが。取り急ぎ年末のご挨拶と言うことで。
皆様良いお年を。

 

神野オキナ拝

メリークリスマス!2016

こんにちはー!
とうとうクリスマスイブですね!
私と言えば今年もまたドタバタと仕事に追われるクリスマスです。
とりあえず来年1月の「EXMOD(仮)」は無事に入稿し、ちゃんと予定通りに出ることとなりました! さらに次の作品を今作ってます(※こちらは毛色の変わった作品なので、読み方は同じで文字の変わる別ベンネームになるかもしれません)
というわけで凝ったネタもないのですが、今回はこんな感じで!

 

 

 

 

 

 

皆様、どうぞ良いクリスマスを!

あ、それとAmazonのKindleさんとBook walker さんで販売中のKADOKAWAおよびメディアファクトリー関連の私の作品の電子書籍が「エルフでビキニでマシンガン!」を除いて全て半額セールだそうです。

よろしければこちらの画像から→

 

 


「魔法使いの憂鬱」 エルフでビキニでマシンガン!外伝

この世界が、このままでは三〇年後には行き詰まると気づいたのは四歳の時だ。
以来、彼は世界を変えたかった。
ところが、非凡な才能に恵まれながらも、残念ながらその年齢が許してくれない。
だが彼は急ぎたかった。
それなのに、世界には凡庸な、あるいは愚かな人間が多すぎて、彼の意志を貫き通す余地を作ってくれない。
世界は変わらなければならない。
それだけは間違いがないのに。
だから五年前、全てを変えるための第一歩として、それまで「作る」事はできても制御はできないとされてきた「呪詛」を完全に制御した形で、とある国へしかけた。
その国は小さい国だが彼以上に世界を変えるための力を保有し、それを無駄に眠らせている罪深い国だったから、当然だと彼は判断していた。
力には大いなる義務が伴う。保有するだけで義務を果たさないのは罪悪だ。
結果は成功し、その国は壊滅的打撃を受けたが、近隣諸国はその呪詛の恐ろしさを理解して、その国は空前絶後の「権力の空白地帯」となった。
だが、世界は何も変わらない。
自分が開けた「孔(あな)」を誰もそうとは認識しない。呪われた忌み地ができた、それだけで処理された。
そして彼の国は、呪詛が衰え、効力が変化すると同時にその国へ侵攻を開始するつもりだ……彼は自分が何もできなかったと焦った。
「輝き」を得る為に孔を開けたのに、孔はすぐに世界の常識によって塞がってしまった……そう落胆しかけた。
だが、それは杞憂だった。
彼が呪詛を仕掛けた国――――テ=キサスは、とてつもない魔法を発動させたらしい。
いつの間にか国境近くにある「英雄の山」と彼の国では呼ぶ場所の中腹部分が抉られて、レンガでも木造でもない異形の建物が一夜にして忽然と現れたという話が飛び込んで来た。
「これだ、これだよ!」
その報せを陽の光溢れる屋敷の庭で聞いて、彼は駆けだした。
「遠乗りに行く、共は要らない!」
そう言って馬小屋で愛馬に鞍を自ら載せ、走り出す。
こういう「遠乗り」に見せかけた旅はよくやるので、王都の外にある、小作人の家に旅装一切を別に置いてあるので、それを受け取ると本格的に走り出した。
目指すは女性の国と化したテ=キサス。
翌日の夕方、彼は自ら望む「輝き」の一端と遭遇する。
街道へふらふらと出てきたドレスでも単衣でもない、奇妙な縫製とデザインの服を着けた少女は、彼が声をかけると襲ってきた。
戦場の兵士が激戦の果てに陥る「凶戦士状態」だ。声をかける間もなく、彼女は手にした奇妙な者を彼に向けた。
小さな破裂音が連続して響き、一瞬魔法障壁が遅れれば、彼は馬上で頭を射貫かれて死んでいただろう。
それぐらい彼女の武器は早く、鋭く、威力があった。
驚愕よりも、歓喜の感情が彼の中を満たした。
明確な殺意の武器、弓矢でも、魔法でもない。
それは「装置」だ。
彼の世界にはないもの。世界を変えるもの。
「素晴らしい!」
それでも殺されてやるわけにはいかない。だが殺すわけにもいかない。
「!」
彼は「杖」である指輪を使い、次々と軽めの雷撃攻撃魔法で少女の動きを止めようとした。
短い稲妻が飛び、草原を焦がす。
道具に頼るだけではない、見事な反射神経で彼女は魔法発動のタイミングをかいぐる。
まるで「命中」の魔法が掛かった暗殺用の矢のように。
だが「命中」魔法なら無効化出来るが、彼女は魔法では無効化出来ない。
彼女は手にした「装置」を殆ど使わず、開ききった瞳孔に彼の姿を映したままその懐に飛びこんだ。
飛びこむ一瞬の間に右手から「装置」が消え、鋭い刃物が現れた。
金属の手甲をはめていなければ、手首ごと頸動脈を突き刺され、彼は死んでいたに違いない。
乾いた音を立てて、刃が流れるが、彼女の反対側の手の拳と膝が連続してきた。
それを辛うじてかわし、彼は魔法使いだからと安心せず、身体の鍛錬を己に課していたことが間違いでなかったと確信した。
後ろへ飛ぶ。
相手も追った。
一瞬の手と拳、肘と膝の攻防。腰の剣を抜く暇はなかった。
僅かに健全な精神と判断力を保っていた彼が勝った。
拳を脾腹に入れて、身体を「く」の字に折る少女の後頭部を掴む。
相手を殺すかも知れないが、躊躇はこちらの死を意味した。
まだ死ねない。世界を変えた後ならばともかく。
遠慮無く、魔法を発動すると、青白い輝きが少女の身体を貫き、細い身体はのけぞったまま硬直する。
硬直したままの少女から手を離し、彼は両手を大きく広げた。
青白い火花に拮抗して、少女の中から金色の火花が立ち上る。
「すごい……これだけの意志の力ははじめて見た!」
彼は目を輝かせる。間違いないあの「装置」といい、この精神力といい、彼女は別の世界からやって来た。
彼が望むことがあの国に起きているのだ。
彼は渾身の力を込め、両手に填めた予備の魔力を封じた指輪を総動員して彼女の心を縛り上げた。
様々な風景が掌から彼の脳へと去来する。
キラキラと光る物質で飾り立てられた木のそばで華やかな衣服を纏っている幼い頃の少女、ピンク色の花びらが散る見たことのない木々の間を急ぐ少女。
つい最近になって、白い、信じられないほど薄くて丈夫な紙が貼られた立て札の中に、文字を探す少女、そして彼女の肩を叩いて微笑む……少年の顔。
他にも膨大な異世界の記憶が一瞬だけ流れ込んだが、それの持ち主である少女の力が大きくて、それを「見て」いる暇はなかった。
本来なら一瞬で数千人を意のままに出来るだけの魔力が投じられ、ようやく彼女の身体からこわばりが消えた。
一気に彼は止めていた息を吐くと、少女は落下した。
「なんという力だ……これでは彼女との意思疎通は出来ない」
嘆きの溜息をつきかけ、彼は気づく。
一瞬だけだが、この少女の頭の中が見えたこと。彼女がこの状態になる直前、建物の中で明らかな魔法の力が発動している光景が見えたこと、テ=キサスの新たな女王によく似た面差しの少女と、少年の顔。
彼女以外に異世界から来た人間が最低でもふたり、いやひとりいる。
テ=キサスの新女王そっくりな少女は恐らく、この世界から向こうへ出向いた当人が幻影魔法で変じた姿だ。
つまり、あとひとりいる。そして彼の企みは結実したのだ。
「これだ」
彼は感極まって叫んだ。
「これが僕の望むものだ!」
彼――――ザック・ナイダーは足下に完全に洗脳され、彼の操り人形と化した少女を横たえたまま、天を仰いで歓喜の叫びをあげた。

「エルフでビキニでマシンガン!」外伝「魔法使いの憂鬱」終

12月13日までの限定ですが

どういうカラクリなのか作者にも聞かされてないんですが、12月13日のサイバーマンデー最終日まで、AmazonのKindleで私の著作が最低7%から最大45%のポイントバック対象(ようするに購入するとそのパーセンテージのポイントがバックされて他の買い物でも使える、というもの)となっております。
まとめ買いよりも単品で買った方が割引率は高いんですが、その度事に前のポイントバックを消費するんで、高いのか安いのか段々分からなくなってくるのが玉に瑕ですが……
下の画像をクリックして是非ご購入お願いいたします。

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というわけで保健所でもらえるセラムングッズを貰ってきました

このところ、仕事ばかりでご報告することもないんで、どうしたものかと思ってたんですが、保健所で性感染症の検査をするとセラムングッズがもらえるよ、という話が聞こえて来まして。
セーラームーンといえば「月に変わってお仕置きよ!」という三石琴乃さんのあの声が最も多くのテレビに鳴り響いた最初の作品。
私個人は主人公よりもセーラージュピター木野まことのほうが漢気のある健気キャラで好きでしたが。そういえば実写版も可愛かったなあ。
考えてみればあの作品もエヴァ以前に開始されているので見ていた子供たちがこういう検査を真剣に考える年齢…………どころか「目に留めて自分の娘たちに検査を薦めやすくなる」効果が狙えるような時代ってことなんでしょうね。
日本以外にも輸出され、アジア圏でも絶大な人気を誇りましたし、ジェンダーフリーの象徴としてヨーロッパの一部では取り上げられるぐらいですしね。
唯一アメリカだけヒットしなかったことになってるそうですが、実際は違うとか何とか……まあそこはさておき。
とはいえ「えー? でも検査ってお高いんでしょう? 病院でレントゲン撮るだけでもン千円するしー」と思っていたら、今や性感染症の検査というのは無料らしく。

実を言うと20代のころ、興味本位で受けたことがありましたが(冒頭、検査が有料だと思ってたのはその時の記憶ではいくらか必要だったと記憶していたため)、それ以来なので、システムやらデータも変わってるんだろうなあと。プラス、最近まで書いていた物に深く関わる場所でもあるんで、ちょっと行ってきました。
といっても個人情報の関わることなんで予約して、二日待たされてのことでしたが。
そういうことから無縁になって久しいんで(と言わせてください……)、当然のごとく検査結果は陰性、感染症はありません、とのこと。

で、お話を職員のかたに聞くと、保健所で断言出来るのは「陰性」だけで、「陽性である」とはっきり診断を下すのはやはり病院に献体を回して一週間ぐらいかかるとのこと。
どうしてなんですか、と訊ねるとどうやら新世代(第四世代)の試薬というのが敏感に判定するところがあって、HIVでなくとも反応することがあるそうで、実際私が検査を受けた保健所でも数例、「実は違いました」ということがあったそうです。

色々誤解や偏見の多いのが性感染症、しかも初期に手を打てば悪化を食い止められる場合も多いので、もっと多くのかたが受けに来るといいんですが、という感じのお話しをしていただきました。

実際、検査結果を待つ一時間、待合のソファの上であらぬ妄想が広がりそうになって自分で自分の考える「可能性の未来」に恐れおののいておりました。
この恐怖の根源がどこから来るか、というと、それは「他の人とは決定的に違ってしまう」という自分自身の持つ性行為感染症に対する偏見の鏡映しなのだなあ、と反省しております。

で、いただいたセラムングッズというのはこれ。

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とっても可愛いパッケージのコンドームという(笑)

使い道は当分なさそうなんで(涙)、知り合いの冗談の分かるオタクの友人に送ろうかと思っています

とりあえず「恋愛と性交渉ってのはファンタジーだから後腐れないんであって、現実は妊娠とか結婚とか以前にこういう部分もあるんだよなあ」と実感した一日でございました。

中笈木六の作品が公開されました

お疲れ様です、ドタバタしているうちにもう11月も終わりですが、10月半ば、この「三人共用名刺」の共有者のひとり、中笈木六のかつての作品が無事に漫画図書館ZのR18部門で公開されることとなりました。
デビュー作である「ライトニング☆サーガ」全作と龍炎狼牙先生の「斬奸」のノベライズ版、さらに百済内創先生の挿絵で描く超伝奇アクション「トレジャーガード沙羅」という6冊です。

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今後、挿絵を描いてくださったイラストレーター、漫画家さんの許可が取れ次第、由麻角高介の作品や残りの中笈作品も公開されていく予定です。

18歳未満の方々は適正年齢になったらご覧下さい!

漫画図書館Zの中笈木六作品はここから!

本日よりシュレイオー続編、電子書籍で復刊です!

と出ておりましたシュレイオーですが、ようやくついに、続編にして完結編の「ダマスカス・ハート」上下巻も田沼雄一郎先生の挿絵を得ての復刊となりました!
「あそびにいくヨ!」でも出てきた彼らのパラレルな過去、そして「あそいく」以前の神野オキナがどんな風にコメディを書き始めたのか、作家志望の方も、以前のソノラマ版を読まれて手元に今はない、という方も、またまた最近神野をしったという方もどうぞよろしくお願いいたします!

電子書籍版「エルフでビキニでマシンガン!」発売記念掌編・その4(完結編)

エルフでビキニでマシンガン!外伝「若き女王の旅立ち」完結編

「………同じ世界の、違う場所を見ることはできる?」
『はい』
そしてその日から、彼女は表向きは「これまでの激務で体調を崩した」ということにして自室に引きこもることにし、実際は抜け道からこの地下の「門」へ毎日やって来ては「行く先」を観察した。
ある程度観察し、慣れてくるとすぐに行きたくなったが、行くにしても何をどうすればよいのかを考えねばならない。
「門」に命じてあちこちを見せて貰うと、この世界にも貨幣があることが分かった。
人々はこの世界でも商取引をしている。そして「金(きん)」はこの世界と同じ価値があるのだと理解した。
三日すると女王は執務に復帰した。
それからさらに半年、毎夜執務が終わると寝る時間を少し削って「門」の所に降りていき、風景を見、そこから得られる情報を書き留めていった。
やがて彼女の分厚い羊皮紙の帳面は情報の整理と、この世界で手に入れるべき物のリストを作り上げていた。
特に彼女の心を捕らえたのはとある武器である。
偶然、向こう側のあちこちを見ていると、「てれび」という動く絵と音(!)が入る記録水晶のようなものがあって、そこで演じられている劇に出てきた女性達が、彼女たちが崇める女のための戦神、ビキニの装束と同じものをまとい、ヨタヨタとあちこちに走ったり転んだりしながら使う武器。
「マシンガン、あるいはアサルトライフル、サブマシンガンと呼ばれる半自動小銃、短機関銃の類いです」
と「門」は説明した。言葉の意味の半分は翻訳魔法を通じてもなお分からなかったが、それでもあれが弓矢などとは想定もできない絶大な攻撃力を秘めた武器なのは理解出来た……なによりも細い腕の大して鍛えてもいないであろう女たちが、大の男たちを片っ端からなぎ倒す威力があるのだ。
リストの真っ先に「マシンガン」の項目が描き込まれたのは言うまでもない。
それから、彼女は腹心の中の腹心である警護役の双子の戦士と乳母でもあった女性に「この国を救うために三日間留守にする、その間を何とか誤魔化して欲しい」と説得し、きっかり半年後、「門」の前に立った。
「門よ、私はあなたを使います」
『事前調査はお済みですね?』
「ええ」
頷く女王の前に「門」の一部が開き、中から小さな箱を押し出した。
「これは?」
『結界装置です。これで四方を囲めば王城と同じ面積で中のものを全て持ち帰ることができます』
「人も?」
『無条件ではありません、これまでご説明した通り……』
とそれから「門」は何度目かになるいくつかの注意事項説明を繰り返した。
「なるほど…………分かりました」
女王は頷いてその小箱をこれまで苦労して運んできた荷車一杯の金貨袋の山の上に置かれた執務服と帳面を収めた竜用の鞍袋の中に納め、銀色の胸と腰を覆う金属の鎧…………ビキニの鎧に身を包み、荷車をゆっくりと引いて「門」へと進み始めた。
ここからは自分ひとりだ。
正直、恐ろしさに身がすくむ思いがしたが、頭を振って怯懦を振り払う。
門が輝きはじめ、その内側にもこれまでの風景では無い青白い光の幕が下りる。
『準備は整いました、我が主、お進み下さい…………これが最後のお目もじになります…………どうぞ良い旅を』
「ええ、ありがとう」
頷いて、「門」の注意通り、若き女王は眼を閉じて真っ直ぐに進む。
ゴロゴロという石の上を進む車輪の音が消え、しかし眼を閉じたまま彼女はゆっくりとしかし確実に馬車一台分の金貨を引っ張りながら「門」の中を抜けていく。
やがて、荷車の車輪が再び音を立てた。
軟らかい土の感触がふくらはぎまでのブーツを履いた足の裏から伝わってくる。
風が頬を撫でていき、ようやく彼女は歩みを停め、深い息をついた。
息を吸い込む。
テ=キサスとは違い、寒い空気が肺を満たす。
目を開ける。
これまで「門」の内側で見ていた風景が彼女の周囲全てに広がっていた。
「すごい…………」
ここは彼女が選んだ場所だ。
周囲は低い塀で囲われ、その彼方に眩く夜を飾る宝石のように人工の、魔法では無い明かりが敷き詰められている。
「綺麗…………」
「門」から見た小さな風景ではなく、眼前広がる広大な「異世界」に彼女は暫く見とれていた。
が、
「君、こんな所で何をしてるんだ!」
眩い光の筒が向けられ、若き女王は自分がうっかり周囲の警戒を怠っていたことに気がついた。
眩い光を避けるために掌を顔前にかざして振り向くと、そこには初老の警備員がぽかんと口を開けて立っている。
「この寒空に君は一体なんて格好を……ああ、そうか、コスプレの撮影か、許可は取ったのかね? まったくこの旧校舎は四方からしっかり施錠されているはずなのにどうやって入ったんだ? 鍵を壊したんじゃあるまいね? 名前は? ここの生徒かね? 他に何人ここに……」
イライラと矢継ぎ早に言いながら腰のトランシーバーを耳に当てて報告しようとする警備員の額に女王はちょい、と人差し指を当てた。
その指に填めた小さな指輪の宝石が小さく燃え尽きる。
警備員の顔から表情が抜け落ちていた。
「あなたは今日も見回りをして、何も見ませんでした。そのままお戻りになられて、いつものようになさってください」
「…………はい」
こっくんと頷き、警備員はそのままふらふらとした足取りで去って行く。
「…………そういえば衛士の人が見回る時間があるのを忘れていました」
子供のようにはしゃいで思わぬ危機を招いてしまったことを恥じ、若きテ=キサス女王は呟いて顔を赤らめた。
そして、荷馬車を、警備員が「旧校舎」と呼ぶうっそうとしたほこり臭い建物の大きな玄関から中に入れる。
かつてずらりと並んでいたであろう下駄箱の形に新しいコンクリの床がその金貨の重みで軋むような音を立てた。
そして
「記憶操作の魔法石はもう三つしかありませんから、注意しないと……」
と燃え尽きた指輪を白い指先から抜いて、革袋に収め、新しい指輪を取りだして填め、ついでに執務服を取りだして身に纏う。
玄関まで戻るとあちこち古びて曇った巨大な壁の姿見の前で自分の身なりを点検する。
口の中で呪文を唱えながら、ゆっくりと、優雅に一回転すると、黄金の蜂蜜を思わせる髪の毛は烏の濡れ羽色に、長い耳はヒト族のそれへと外見を変えた。
正確には肉体を変化させたのでは無く、自分の身体の上にそう見える幻影を纏っただけなのだが。
「服は…………あれが多分、ここでは目立たないでしょうね」
壁から剥がし忘れて残ったと思しい「正しい男女の制服/三年生」と下に小さく書かれたポスターの前に立つと、女王は執務服にも幻影をかけた。
「…………これで、よし」
と腰に手を当てて頷き、女王はとりあえず荷車を引き入れた「部屋」へと戻っていった。
やがて彼女が「先輩」と名乗り「後輩」となる少年に出会うのはこの一週間後のことである。

エルフでビキニでマシンガン!外伝「若き女王の旅立ち」終

電子書籍版「エルフでビキニでマシンガン!」発売記念掌編・その3

エルフでビキニでマシンガン!外伝「若き女王の旅立ち」後編

はかりごとは密を持って成すべし。
ここに誰かを呼んでも学者たちは好奇心から、大臣たちは常識に反しすぎることから混乱して無限の言い争いを始めることは眼に見えていた。
女王は決断し、判断する職務であり、地位だ。
「…………決断せねば」
彼女は呟いた。
「この世界をもっと観察したい、できますか?」
『はい我が主』
声は滑らかに答えた。
『私に残された跳躍用エネルギーはあと一回分しかございません。周到に世界をお選び下さい。他を見ますか?』
「ええ」
彼女が頷くと、風景が変わった。
今度はぐっと親しみのある、石と土でできた建物、北方のソグディアナの風景として見たことがある丸屋根や、ここよりもっと南方にある国の瓦ぶきに似た屋根が続き、大きな箱のようなものがゆっくりと移動する中、前よりもずっと少ない人数……それでも彼女の国の王都にかつて溢れていた人の数よりも多い……が歩いていく。
先ほどの「馬なし馬車」らしきものが通っていくがこの風景の物は車輪がこの世界の馬車のように大きく、細い。
「ここは?」
『先ほどの風景から約100年ほど前です』
しばらくその風景を見つめ、女王はこの世界は馴染みやすいが、今自分が欲しているものは手に入れられない、と判断した。
それから後、「門」は三回ほど別の世界を見せてくれたが時代が遡るばかりだった。
「一番最初の場所の、更に未来にはいけないの?」
『残念ながらそれを行うにはエネルギーが不足しております』
「四つから選べ、ということね」
『そういうことになります、我が主。力不足をお許し下さい』
「……どれくらい選ぶ時間はあるの?」
『選択状態では殆どエネルギーを消費しません』
「………同じ世界の、違う場所を見ることはできる?」
『はい』
そしてその日から、彼女は表向きは「これまでの激務で体調を崩した」ということにして自室に引きこもることにし、実際は抜け道からこの地下の「門」へ毎日やって来ては「行く先」を観察した。(完結編に続く)