「カミカゼの邦」について:その2

「クリミナル・マインド」というドラマがあります。
ご存じない方に説明すると、アメリカではかなりヒットしているテレビシリーズで日本でも人気があって、今12シーズンまで放送されてます。
そのシーズン9だったか、10だったかに「なんで昔のお伽噺は残酷だったか」という話があります。
その中で答えの一つとして出されるのが「子供たちが残酷な出来事に直面しやすかった昔は、お伽噺を語ることによって、前もってそのショックを和らげる必要があったから」というものです。
確かに昔のほうが警察も司法制度もなく、お伽噺のモデルになるような残酷な事件が「事件」として認識されず個人の「災難」として処理されることが多かった……ということが最近歴史研究の上では明らかになりつつあります。
翻って現在、子供たちが残酷な目に遭えばそれはすぐ……例外はありますが……司直の手が入り、行った者たちは批難されるようになりました。
ですが、残酷な出来事は人間が生きている限り存在します。
残酷な描写のある小説、マンガ、テレビドラマ、映画などの娯楽というのはそういうものに対する心構えを作る「今のお伽噺」なのかもしれません。
私が今回書いた「カミカゼの邦」はそういう意味でお伽噺です。
今現在、私が「そうなってしまったら怖い」と思う事を全てつっこみました。
例えば、それは沖縄が再び戦火に巻きこまれて誰かに(あるいは自分に)死が訪れたり、または日本という国が巻き込まれ、引き裂かれ、死んだほうがマシだと思うような恐怖や傷病に苛まれたりすることをも考えた「未来への恐怖」です。
ただ、悪夢を提示して世界は終わりだ、行き止まりだと叫ぶのは、それもまたウソだとも思います。
この世の終わりのようなことがあっても、人間は死ぬまでは生きていくのです、自動的に、あるいは受動的に。
私の父は酒と煙草を死ぬまで手放せず、そのために寿命を縮めましたし、当人も50を過ぎてから「俺はすぐ死ぬから好きにさせろ」と口癖になっていました。
が、それでも76まで生きていました。
人間は「うっかり死ぬ」よりも「うっかり生きる」ことのほうが多いのです。
だから「それでも生きていく人間」を描くことも同時にこの作品の目的になっていました。
政治的な「左」「右」の話ではなく、どの国に自分が所属しているか、でもなく、ただ「過酷な状況が発生するであろう状況に常に置かれている場所でそれが起こったとき、どういう風に世の中が変わり、自分たちが変わって行くか」という恐怖とそれでも生きていくことへの覚悟を描いたつもりです。
さらにもう一つテーマがあります。
人間は出自とか過去を背負い、それから逃れることは出来ず、しかし他の人間と関わることをしながら、何を見、考え、何を選んでいくかによって自分で自分を作り上げていき、そして最後は残る、残らずにかかわらず、また主義主張や思想、善悪にかかわらず、何とか己の生きていた証を世界に残そうとする……哀しくもおかしな生き物ではないか? ということです。
仏教の言葉で言う業や宿痾、という言葉が一番近いのかも知れません。それも描きたかったテーマなのです。
だから今神野オキナが出来る「全部のせ」であると同時に、バランス調整もできうる限り施した、これまでの20年で構築した作家技術を全て注ぎ込んだ大娯楽作品となっております。
1900円分、しっかりお楽しみ下さい。それだけのものになっております。

「カミカゼの邦」という作品を書きました。

お疲れ様です、神野オキナです。

この度「カミカゼの邦」という作品を書きました。
「あそびにいくヨ!」が終わり「疾走れ、撃て!」も完結して、以来、基本コメディ方向への作品ばかり連ねてきました。
「EXMOD」と「リラム~密偵の無輪者」はシリアス系に属しますが、あまり黒いお話にはせず、基本プロフェッショナルだったり、「人との関係性の変化」をメインにした切なさをテーマにして描いてきました。

これには「あそびにいくヨ!」開始から干支がひとまわりして新しい、若い読者のかたに向けて書いているというのもあります。
この辛いご時世に、ライトノベルにおいてまで辛い話は読みたくないよね、という思いもあります。
そういう意味で一番明るい方向に振り切ったのは「エルフでビキニでマシンガン!」ですね。
これはこれで楽しいですし、本来ライトノベルの人間ですから作りがいもあります。

ただ、時代に合わせて「使わない道具」というものも出来てくるわけです。
いえ、ペンだとかノートだとかという意味ではなく、単純に、レーベルごとの空気に合わせた微調整の方向性……ジャンルだったり描写だったり、キャラクターだったりという意味ですね。

今回の「カミカゼの邦」はそういう意味では「シックスボルト」以来、久々に自分の中にある色々な感情や思考を解放した作品となっています。

フルアクセルを踏み抜きました。

表現方法も、ストーリーもキャラクターたちも、一切手加減をしていません。
久々に、を乗り越えて、これまで踏み込んだことのない領域です。

日中が戦争するかも、という、沖縄に住んでいてこの10年、急速に膨らみはじめた悪夢と、それがもたらすであろう被害と闘い。
戦後、そこから派生するテロ、そしてwebが生み出す新しい人間同士の繋がりや利害関係のシステムと、「あり得そうな明日」を描くことにしました。
そして神野オキナ作品には珍しく「チームもの」になっています。

扱うものは戦争、テロ、復讐、虚無、欲望、愛、セックス……やりたい放題にやらせて貰いました。
普段の4倍、原稿用紙1200枚を超える初稿を仕上げるのに、たった2ヶ月しかかからなかったところを見ると、どうやらかなり、私は色々なものを鬱屈させていたようです(その代わり書き直しや整理に時間を取られましたが)。

そして、なんという奇跡かただ暗いだけ、陰鬱なだけではなく、読み終わった後に爽快感が得られるような作品が生まれました。

これまでの神野オキナ作品にはないタイプの主役ですし、脇役たちですし、物語になったと思います。

単に長いのではなく、「読み応え」のあるものが出来ました。発売までもう少しお待ち下さいませ。

※書籍データ

カミカゼの邦(かみかぜのくに)
著者 神野オキナ
発行 徳間書店
四六版
ISBN 978-4-19-864450-5
発売日(予定) 2017年08月29日
販売価格 1,900円 (税込 2,052円)

新刊「カミカゼの邦」のお知らせ

久々に一般向けのお仕事の報告をさせて頂きたいと思います。

実を言いますと、この半年ぐらい、とある作品にかかりっきりになっておりました。

その作品が来月、8月末にようやく発売されます。

 

 

タイトルは

「カミカゼの邦」

といいます。

カミカゼの邦(かみかぜのくに)
著者 神野オキナ
発行 徳間書店
四六版
ISBN 978-4-19-864450-5
発売日(予定) 2017年08月29日
販売価格 1,900円 (税込 2,052円)
現在、ウェブの上では以下の三箇所で予約が出来る様です。
E-hon

TSUTAYA

楽天ブックス

「リカバイヤー」以来久々の「シックス・ボルト」の路線……シリアスなハードアクションものの新作ということになりますでしょうか。
お話は東京オリンピック後を舞台に、沖縄において日本と中国が戦闘状態に突入、というところから始まります。
紛争状態が終わった後、勝利を掴んだ日本を舞台にとある陰謀が進行し、それを沖縄で戦った元民兵が知って……という内容です。
徳間書店さんからの発売、税抜きで1900円というお値段は少々お高いですが、四六判で400ページ越え、つまり400字詰め原稿用紙でのべ1200枚以上の内容、上下二段組なので読みごたえはあると思います。
また、一般文芸での発売ならではの、ハードボイルド/バイオレンスですので、陰謀、エロス、ハードアクション、グロ描写も含め、私が今現在、もてる全てのエンタメの技術を注ぎ込んで作りました。
この作品が書けたからあと10年は戦える、と我ながらに断言出来るほど、凄い作品が書けたと思います。
どうぞ、ご期待下さい!

 

壊れたガンプラのように

最初は根を詰めるあまり、猫背になって腕の付け根の筋肉が疲労してきたんだろうと思い、ストレッチとロキソニン膏薬で直そうとしておりました。
ところがメール数通とプロットを4、5本書いて、さらに8月の新作の再校等々を片付けてたあたりで、みるみる痛みが酷くなり、イブクイックを飲んで今日は寝よう、として仰向けになったら右肩が下がって痛い。
以前も四十肩になりましたが、これほど痛いのは初めてでした。
慌てて右肩の下にバスタオルを畳んで……とこの時点で肘から上の右腕を上げ下げするどころか上下左右どっちにも自力では動かせないほどの激痛が走るようになりまして。
キーボードを打つにも左手で右手を持ち上げてアームレストに載っけて、それでも打ってると痛い。
真夜中な上、歩き回ることに支障はない。
小学生の頃に接着剤を多くくっつけすぎた、ポリキャップ導入以前のガンプラのように右腕は肘を九十度前に曲げる以外は出来ず、肩は動かせないという有様……どころか右肩j自体がちょっとでも動くと痛い。
「四十肩、五十肩の対処法」から「バスタオルで三角巾を作る方法」を見つけ、それで固定すると確かに少し楽に。

仕方ないので寝て、翌日病院にいくことに(おそらく四十肩を悪化させたのだろうとは思いますが、素人判断がこの手の場合、時に偉いことを引き起こすので)。

それでも業務連絡や問い合わせメールなどはやらなくちゃいけませんから、起きてメールを……と思ったらもう、腕を机の上に載っけて指先を動かすことすら痛くて出来ない位に悪化。
やむなくiPhoneの音声入力機能と左手による修正を行い、数通のメールと「今日は病院に行くのでしばらく連絡出来ません」というメッセージを送って整形外科に。
どうやら腱を痛めたらしく、レントゲンやエコーをかけて貰ったら炎症を起こしておりました。

上の書類にもありますように、とりあえず痛み止めの注射と数日間の安静を、ということでバスタオルの三角巾を着けたまま家まで帰って痛み止め飲んで、ノタクタとやっております。

なおこの文章も念の為、音声入力と左手の補正で打っています。
校正校閲は幸い、この症状が出る前に何とかなりましたので、このコトが刊行予定などに影響は出ないと思います。

ただ個人的なメールSNSへの返事は遅れると思います。では。

アニメ「あそびにいくヨ!」も七年前になりますね

気がつけば、「あそびにいくヨ!」のアニメ第一話の放映日でございます。
ファニメーションさんのおかげで英語字幕、吹き替えもついて世界的に販売され、今なお年に数回海外のファンのかたから「あの続きはどうなった?」と訊かれる有り難い作品となりました。
原作も二年前に終わり、不思議な猫たちは去って行きましたが、ま、七周年と言うことで少し思い出話を。
七年前というのはあっという間にも思え、十年近く前と考えれば随分昔の話だなあとも思えます。
とりあえず夏はキラキラしているものですが、2010年の夏は、デビューなんて夢のまた夢、原稿用紙に鉛筆で書いていた10代のころ以来の、とってもキラキラした夏でした。
何度か話しているのでご存知のかたもいらっしゃると思いますが、実を言うと2004年ぐらいにも一度、アニメ化の話がありました。
時期的にはそう、丁度PS2でゲームの企画が出た頃です。
かなり有名な所で大いに期待もしたんですが、いつの間にか立ち消えに。
以来「決まったときだけ教えて下さい」と編集部にはお願いしておりました。
で、10巻も超え、そろそろ作品自体のフィナーレを考えないとねと考えはじめた矢先、MF文庫編集部から「アニメ化決まりました」と言われたときは心底嬉しかったです。

しかも80年代「天地無用!」や「メガゾーン23」「神秘の世界エルハザード」さらにいちかのモデルのひとつである「戦え!イクサー1」を作ったAICの流れに連なる会社で、まさか自分の作品がアニメ化されるとは夢にも思わず。
実は一時お蔵入り手前だったところを当時のMF文庫の編集長三坂さんの奔走で何とか制作にこぎ着けたという話はそろそろ解禁してもいいでしょう。
本当にMF文庫さんには、いくら感謝しても足りません。
それからロケハンにスタッフの皆さんが来て、キャストを決めるためのデモ音源が来て、主題歌の仮歌がやって来て、設定書が仕上がり……第一話のアフレコに立ち会うことになるわけです。
1クールではありましたが、自分のキャラクターたちが動き回り声を上げて笑ったり泣いたり怒ったりするのをただただ、収録スタジオの中で呆然とみていたものです。
特に第九話は「俺らは寂しいスペースマン」が使用出来ただけではなく、茅原実里さんにラウリィを演じて貰い、最後はほぼオールキャストでの合唱という夢を、現実のものとして目の前で見せて貰いました。
心残りは全話の収録に立ち会うべきだったなーというのと、第一話のお墓の前の宴会場面、無理を言ってでもガヤ(エキストラ)の声をやらせて貰えば良かったと言うこと(笑)

そして今なお不思議なんですが、作者権限で全ての回の絵コンテ、脚本、設定資料をいただいた筈……なのですけれど、何故か金武城真奈美の学校の制服姿の設定資料「だけ」が来ませんでした。
アニメを作る以上存在する筈なんですが「これで全部です」ということで……今や制作会社のAICプラスさんもないので、真偽の程は判りません。

出来ればアオイの妹のガーヴルのサヲリとその一家、チャイカの娘たち、そのほかの後半登場するキャラクターたちも見てみたかったですが、それは未来の夢と言うことで取っておきましょう。

そして今年の夏からはライトノベルだけでなく、少し違う神野オキナをお見せ出来ると思います。
もうちょっとお待ちを(笑)

明日からEXMOD2の外伝を連載します

2017/05/11
さて今月……というか来週にはもう「EXMOD~思春期ノ能力者」の続編、「EXMOD2~黒ノ追撃者~」が発売となります。


一週間後にはKindle版をはじめとした電子書籍の販売もはじまりますので、またきんどうさんに寄稿させて頂く予定です。
このEXMODも含め、異世界を緻密に作ってそのなかで経済戦争としてのスパイ戦を描く「リラム」、ぶっちゃけたお気楽ファンタジー「エルフでビキニでマシンガン!」、そして(青春SFとでもいうべき)「EXMOD~思春期ノ能力者」、そして先月発売になったスタンダードな異世界移行もの「軍師/詐欺師は紙一重」と、色々手変え品替えで幅広いものを提供してきました。
中でも「EXMOD」は私の作品の中では珍しい、「超人魔人仙人」の類いのいない、現実世界の延長線の世界に徐々に事件が起こって否応なく主人公たちが巻きこまれていくという「受け身」の話となっています。
そういうわけで前回もEXMODに関しては、ガガガ文庫の編集部の許可を頂いて、こういう外伝を書きました。
「ある日の小日向家」
というタイトルで、本編の事件が起こる前の彼らの関係を描いたものです。
EXMODに出てくる小日向世衣、小日向亜世砂、そして彼女たちの「お隣さん」の少年霧山真之斗は一種の疑似家族であり、疑似姉弟という関係ですが、世衣はとある事情で真之斗を溺愛している、という設定です。
本編では開始早々に起こる事故で「どう溺愛していたか」はあまり書かれていないのですが、この短篇はそれを補うものです。
そして今回、EXMODが2作目を出版することになるにあたり、小日向姉妹と真之斗を、別の視点から描く短篇を添えることにしました。
これは、一巻と並行しておきる別視点からのお話です。
ガガガ文庫編集部の許可も頂いたので、明日から1日1回、全8回でお送りしたいと思います、お楽しみに!!

近況報告とお詫び

えーと、随分とホームページの更新が滞っております。
楽しみに来て下さっている方たちには申し訳ないと思っております。
昨年は大幅にスケジュールが狂う出来事があって、なかなかお仕事の執筆にかかれなかったのですが、今年はその分……という訳でもありませんが、以前にお話ししたような、新しい執筆スタイルに移行して頑張っております。
お陰様で今年は月1冊のペースで仕事をこなしておりました。
ただ、出版物というのは書き上げた側から本になるというわけではないので、本そのものの販売ペースというのは偏ってしまいがちでして。
それでも2、3ヶ月に1冊の割合で本が出ているというのはありがたい限りです。
今現在、一般向け小説を1冊完成させており、これが8月末出版予定でさらに執筆中のものが1冊。プロット売り込み中のものが1冊。
それ以外に現在進行形で執筆中のライトノベルが1冊、発刊待ちが1冊。プロット提出して返事待ちが3冊あります。
そうなるとどうしても並行作業になりまして、こちらのほうの更新が遅れてしまうわけでして……申し訳ありません。

また去年よりAmazonのKindleの情報を扱う電子書籍の本屋さんという趣の「きんどうどうでしょう」さんにお願いして、ライトノベル以前「ジュブナイル」と言われていた時代の傑作を紹介する文章を書かせて頂いたりしております。
○次は君の番なのだ!神野オキナの名作案内『吸血鬼ハンターD』
きんどうさんには、これをきっかけにいろいろとお世話になっておりまして、ノベルゼロから出た拙作「リラム~密偵の無輪者~」について書かせてもらいました。
○『疾走れ、撃て!』神野オキナ最新作はファンタジー世界のスパイ物 「リラム?密偵の無輪者?」
そして、今年の頭に出た「EXMOD~思春期ノ能力者~」についても、こちらは「本宣」というきんどうさんのサイトの新コーナーの1回として書かせてもらいました。
【本宣】神野オキナが新刊「EXMOD:思春期ノ能力者」を通して語りたい30代以上にとって懐かしい『一般人超能力者ものジャンル』の魅力

で、先ほど書いた発刊待ちが一冊というのが来週には続編が出る「EXMOD」という事になります。
で、明日は「リラム」から「EXMOD2」も含めたこれらの、そしてこれからの新刊について、色々新しい事を試そうと思っているので、そのお話をしたいと思います。
では、また明日。