アメリカドラマも疲れてるんでしょうねえ

ここ20年ぐらい、アメリカのテレビドラマというのは海外のドラマの中でも全世界を相手にするだけあって、大したレベルの脚本が上がってきます。社会問題も真っ正面から取り上げますし、最新テクノロジーに関しても貪欲に取り入れ、整理し、エンタメ的なディフォルメはあるにせよ完全に間違いというモノは驚く程減っています。
プロットは二重三重に絡み合い、一話完結作品も実はその背後に全編を貫く物語があり、シーズンの終わりにはそれが一気に動き出し、今までのお話の中で見過ごしていたことが実は……なんて展開をよくもまあ、と感心しながらチェックしてました。
ですが去年一昨年あたりから、これまでとはちょっと毛色の変わった作品が人気を博して日本まで輸入されるようになってきたようです。
またこれまでロングランを続けていた作品も方向を変えるモノが増えてきました。
単純明快で、キャラクターの掛け合いで展開し、毎回完結でとにかく明るい。
判りやすいギャグとお約束な恋愛展開、やり過ぎて登場人物の知能指数がえらく低かったり、前シーズンに比べて半分以下になってるように見える作品もありますが……
特に残念ながらシーズン1で終わってしまった「ラッシュアワー(J・チェン主演のアクション映画のテレビ化)」とこちらは第3シーズンからは主役ペアの片方が降板入れ替えという「リーサル・ウェポン(こちらも同タイトルの映画のテレビ化)」、そしてシーズン4にして唐突に打ち切りになってしまった天才チームの活躍を描く「スコーピオン」の3作品はその傾向が顕著でした。
視聴率的に苦戦してシーズン2こそなかったですが、シーズン1はちゃんと全話放送された「ラッシュアワー」は最初から明るく楽しく、で最後もみんな集まってささやかなホームパーティというハッピーエンドでした。
「スコーピオン」もシーズン2までは主人公の一人であるウォルターの姉の難病に絡む話が本編とは別の重大なお話として流れていましたが、彼女がシーズン2のラストあたりで亡くなると、シーズン3から、物語は一気に明るさを強調するようになりましたし「リーサル・ウェポン」のシーズン2もシーズン1にあった多少の陰鬱さは消え去って主演ふたりの知能指数どころか、他のキャラクターの知能指数まで半分になったような展開や場面が増えました(笑)
思えばこの20年、「ヒル・ストリート・ブルース」に現れた「複雑な脚本」は「ER」と「24」で遠慮なく主人公を追い詰める複数のドラマのラインになり、「クリミナル・マインド」や「パーソン・オブ・インタレスト」「第一容疑者」「シカゴファイア」に始まる「シカゴシリーズ」あたりまで複雑になり大きくなりジェットコースターになっていきました。
恐らく22話、十数時間もそれに付き合わされることにそろそろアメリカの観客は飽きているのかも知れません。
それは全米視聴率のトップが「CSI」シリーズが終了して以来、この数年連続1話完結で捜査チームを「家族」として描き続ける、判りやすい「NCIS」シリーズなのを見ると顕著という気がします(もっともCSIシリーズにも複数のお話のラインはあるのですが、それは全体を覆うほどの強さはなく、基本、判りやすい明るさが根底にあります)。
むしろ複雑な複数の話が同時に走る作品は「THIS IS US 36歳、これから」のような「普通の人たちのドラマ」や短い話数(それでも13話)の配信ドラマなどに主戦場を移していくように思えます。
さて日本の場合、どうなるんでしょうね。

DCのヒーロー番組「フラッシュ」シーズン4を見ております

シーズン4ということはもう4年も続いてるんですな。
これぐらい長く続くとキャラクターの成長や因縁が本物になってくるんで凄いなーと。
個人的には今回、初登場したメタヒューマンの探偵、ラルフ・ディブニーがいいキャラになっておりました。
当初は調子のいい、趣味の悪いジョーク連打するだけが特徴の、アカン元刑事のロクデナシ、と思ってたら、実は「DC世界第二位の探偵(第一位は当然ゴッサムシティのコウモリなので)」エロンゲイテッドマンだと知って驚きましたが(笑)
ヒーロー稼業をはじめた当初は仲間たちからも冷遇されてて、スーツもこんな感じでスが……

次第にヒーローになっていき、なぜつまらないジョークを停められないのか、その捻くれたモノの見方はどこから来たのか、というのをちょっとコメディタッチ強めで描いていくというのが今回のフラッシュの中ではいい感じの息抜きキャラになってて楽しいです。
CW製作のDCヒーロー番組お馴染みのクロスオーバー作品は4作品まとめて3時間以上もあるもので相手が時空を越えてやって来たナチスということで随分お気楽になってはおりましたが、そこに出てこなかったのは残念です(訓練中だったので刑事のジョーたち夫婦と共に護衛も兼ねて避難させていた、という説明はあとでありましたが)。

新しいドクター・フーも予告編が登場しました

そういうわけでピーター・カパルディの、原点に戻ってちょっと気むずかしいお爺ちゃんになった12代目ドクターから、今度はとうとう女性のドクターへとリジェネレーションしたわけですが、同時にスタッフも総入れ替えになったそうで。
予告を見ていても、毎度お馴染みかつ、ドクター・フーのターディスに並ぶアイコンとなっているダーレクやサイバーマンの姿がないのが逆に「新しいドクターを作りますよ!」という意気込みのようで。
今回のコンパニオンの中に「ロー&オーダーUK」のベテラン刑事ロニー・ブルックスを演じてたブラッドリー・ウォルシュが出ているのがイギリスドラマ好きとしては嬉しい……そういえば「ロー&オーダーUK」の第3シーズンまでは10代目ドクターのコンパニオンのひとり、マーサ・ジョーンズを演じていたフリーマ・アジェマンがレギュラーで登場し、その後検事側に5代目ドクターのピーター・デイヴィソンが登場したりしてましたっけ。
なおドクターの持つ「魔法の杖」、ソニックスクリュードライバーも一新して、バイオメカ的なデザインになりました。
日本ではHuluさんの配信でしょうが、無事うまいこと吹替版がつきますように。

「死霊のはらわたリターンズ」S1~2感想

今回は13日の金曜日に相応しい話題です(笑)
Huluで「死霊のはらわたリターンズ」シーズン2までを見ました。

今から数十年前、まだ無名時代のサム・ライミ監督と仲間たちが作った「死霊のはらわた」は低予算ながら異様なテンポの良さと演出で、当時嵐のように巻きおこっていたスプラッタホラーブームのトップランカーに踊り出て、以後サム・ライミは大監督への道をひた走ることになります。


ゾンビものという体裁で当時日本では喧伝されてましたが、もっとスピーディで狡猾で、劇中呼ばれる「悪霊」という言葉がピッタリするような傑作でした。
当然続編が作られ、主役のブルース・キャンベルは青年期の殆どをこの映画に捧げたと言っても良いでしょう。

なお「死霊のはらわたⅡ」は「死霊のはらわた」の続編ではなく、一種のリメイクで、アッシュが事件をはじめたことになっています。
特に第三作である「キャプテン・スーパーマーケット」の劇場公開版のラストは痺れるぐらい格好良かったです(残念ながらサム・ライミご本人はこの、映画会社の要請で撮らされたラストがえらく嫌いで、現在販売されているソフトは全て本来の『時そば』オチが使われてますが……)

で、それをテレビシリーズにするってことはどっちのオチを使うの? と思ってたらやっぱり劇場公開版のその後らしく。
最初の「死霊のはらわた」では結構純情で、恋人の言いなりに車を出したりと、あまりキャラもたってなかったアッシュですが、1作目のリメイクでもある2作目では事件をはじめるテープレコーダーのスイッチを「面白そうだ」と入れ、悪霊に取り憑かれた手首と格闘した挙げ句切り落とした辺りから「適当で直感で物事を決めてしまう&相手に負けるぐらいならどんな手段でも使う」というキャラが付属し、「キャプテンスーパーマーケット」では最終的に「適当でいい加減で自己中のナルシスト」というキャラが完成しました。

で、当然テレビシリーズもそういう設定です。何しろ物事を最初に悪化させたのは女の子をナンパしてマリファナ吸っていい気になった当人という……!
で、大抵のオカルト、ホラー系の映画をテレビにすると血糊の量はぐっと減るんですが……これは「いや、スプラッター映画の金字塔のテレビ化ですよ? 何言ってるんですか?」とでもスタッフが画面の向こうから語りかけてくるかのように、毎回最低でもドラム缶3本分は血糊がぶちまけられるような作品となっておりますので、苦手な方はご用心。
意外な役者さんが意外な役周りで出てきて無残に殺されたり、殺された後はしっかり死霊に操られて襲ってくるとか、しかも負けそうになると本人であるかのように装って逆襲しようとしたり、本来の映画版に残っていた要素はかっちり押さえております。
凄いなあと思うのはアッシュのその「デタラメでいい加減で自己中でナルシスト、基本考えるのは苦手で女好きで、めんどくさい事は撃ってから考える、しかもちゃんと何とかしてしまう強運の持ち主」というキャラクターのお陰で物語が始まり、回転し、納まるところに納まっていくという。
特にシーズン1の最終回なんて、アッシュ以外のキャラクターでは有り得ないラストです。
でシーズン2になると「それは無関係な一般市民から見ればサイコ野郎ってことだよね」という片鱗を見せ、アッシュにとって死霊=動く死体を切り刻むことが一種の日常で、死ねば死体もタダの物、もしくは悪霊の取り憑く器でしかない、ということをギャグとして見せていくわけで。
一応ドラマなので仲間も出来ますが、気弱で善良なパブロは叔父さんを殺されても一般市民的善良さをまだ「少しは」持ち合わせるものの、それ以外の仲間となる女性達は逞しく状況に対応し、最初こそ躊躇するものの、死にかけて何とか生き延びると、二度目からは遠慮無しに銃をぶっ放せる人間になっていくというあたりの「周囲の頻繁な人死にや、人が人の形をしたものを壊すことになれてしまう」という怖さもちらっと描いていて(見ている間は殆ど気付きませんが)、というのも見事だなあと思います。
シーズン2は評判になったのか意外な役者さんが出てきて、いい役を貰ったと思ったら無残に殺されたりとか、「死んだら死霊、いい人は頭が潰されて死霊にならない」を徹底しているのは偉いというか無茶というか……
吹替もテレビドラマ「バーン・ノーティス」以来ブルース・キャンベルのフィックス声優になった江原正士さんの声で喋るので、とんでもない格好ツケのロクデナシなのにどこか憎めないアッシュの魅力が爆発しております。

残念ながらアメリカではシーズン4でシリーズ終了が決定しちゃったそうですが、さてどんなオチをつけるのか(あるいは着けないのか)楽しみにしていたいと覆います。

個人的にはシーズン2に登場し、江原さんが「NHK教育のキャラクターのように」演じたこの「切り裂きアッシュ君」のマペットが実際ネカから販売されてるのでちょっと欲しくって……