オフビートな刑事物「シャドウ・ライン」

この前久々に見返してみたのですが、3年ほど前に放送されたBBCの「シャドウ・ライン」という作品があります。

全8話という短い作品ですがこれがまあ、重いのなんの。

女王赦免で(何故か)選ばれ、出所したマフィアのボスが暗殺される、という、普通ならど派手なオープニングなのに、それをいの一番に見つけた若い警官と、老練というより、たちの悪い警官ゴロな老警官のいやな、実に嫌なやりとりで始まるというオフビートなドラマ。

事件を追う、以前相棒と共に捜査中に銃撃を受けて死にかけ、命はとりとめたもののそれ以前の記憶の一部が無い黒人刑事(相棒は死亡、そして本人は靴箱から謎の札束が出てきて、ひょっとしたら自分は……と疑うことに)と、若年性アルツハイマーの妻を抱え、この仕事を最後に引退を決めているマフィアの幹部がダブルで主役。

特に後者のクリストファー・エクルストン(「ドクター・フー」の9代目ドクター!)は儲け役。
まっとうな常識人でなおかつ怜悧な頭脳を持っているばかりに「雑」な人間ばかりの組織から抜けきれず、最後まで「先読み」をしながらもそれを回避出来ない弱さが上手い。

そんな刑事とマフィア側の事情が二重構造になり、二転三転とかみ合っていく様が素晴らしい。

生き残る者も死ぬ者も、結局誰も幸せにならないまま、システムの奴隷になってすりつぶされていく物語。

劇中に出てくる老齢の「管理者」が「マラソンマン」のマックス・フォン・シドーばりに恐ろしい。

最後に明らかになる真相は「相棒」でも扱われるような話なのだけれど、このラストは日本はおろか、アメリカでも不可能だろうなぁ。

「我々は、仲間を決して見捨てない」

という言葉がこれほど空々しく寒々しく、恐ろしく響く物語は、多分、日本では、いやもう今のアメリカでも作れない。

「人がシステムを腐らせ、腐ったシステムは人を腐らせて延命していく、そして腐った人々はそれを異常だとは思わなくなる」

というあたりがいかにもイギリスです。

これを国営放送が作るんだから……。

CSのAXNやミステリチャンネルなどで放送されることがまたあると思いますので興味のある方は是非。