サクラブリゲイド

本屋で本を買うのが好きです。
中にはそれまで見たことも無かったのに表紙をちらっと見かけた瞬間、こちらを「呼んでいる」本に巡り会えることがあるからです。

なかなか電子書籍だとそれがないんですが、今回珍しくそれが当たったのがシリウスから出ている「サクラブリゲイド」です。

日本が南洋の小さな島国に密かに軍事基地を持つ様になった少し先の未来、脊椎に障害を持った少年少女たちに「自分の足で立って歩く」ことと引き替えに「ヒトガタ」と呼ばれる二足歩行兵器の実験部隊に配属され……というのが前提として提示される世界観。

ところがその島国はアメリカから「テロ支援国家」指定されてしまい、日本側から見れば「都合の悪い存在」になった彼らは斬り捨てられてしまうが、操っている当人たちでさえ「どういう兵器かよく分からない」と思っていた「ヒトガタ」は実は……という所から始まるこのお話、それからあと海外ドラマのように先を読ませない二転三転を繰り広げていきます。

陰鬱なだけの話にならず、そして「生きるために必死に戦う」ことを読者に「共感」させる物語の作り込みはお見事で、絵も達者、「ヒトガタ」のデザインに驚くのも、その後色々仕掛けがあって……と油断が出来ずにグイグイ引き込まれていく作品です。

同時にちゃんと青春物であり、人間ドラマでもあるという豪勢さ。

今のところ4巻まで出ていますが、これはかなり面白いのでよろしければ是非。

とりあえず、書籍でも購入しようと思っております。ハイ。

「拳銃と目玉焼」

kenjuu

DVD購入していた「拳銃と目玉焼」という自主制作映画を久々に再鑑賞しました。

驚く程画面がクリアで、役者さんも明らかにプロか私も顔をしってる関西の俳優さん、芸人さん。しかも「何を映したいのか」がはっきり判る画面構成なのが凄い……と思ったら制作した人は結婚式などを撮影する業者の人でもありいわば「野放しのプロ」なんですね。
自主制作にありがちな、一刻も早く完成させたい、荒削りでも早くこの作品を世に問うという自己満足のような焦りが皆無の「本気で映画を作る、それも娯楽映画」という作り手の気概が見えます。
内容は「自警団物」の皮を被った関西の「世話物」。
真面目で気弱な男がふとしたことから「正義の味方」を始めるけれど、普段は気になる女性には声もかけられず、それどころか、その彼女は彼の知らない悲しい裏の顔があって……というお話。
大傑作とは言えないかもしれませんが、これ、続編か、テレビシリーズにしてしまったら化けるんじゃないかなあ、と思います(そういう作品だとして作っているわけではないのでしょうが)。
ジャケットにも移っているコスチュームやプロップ類も世界観にあったもので「少し格好良く、かつ今の日本の工場で作りそうなリアルな『格好悪さ』」が同居した物でちょっと欲しいぐらい(特に主人公の持つ銃器)
あと、ちゃんとしてるなあ、と思ったのは単に物語の後半にスーツ付けて走らせるだけな場面にも専用のスタントマンがいたことです。
知り合いの映画関係者に聞くと、口をそろえて「そういう所に気をつけるのは本当に大事なこと」なのだと言います。
撮影事故というのはそういう「素人でも出来そうなこと」や「一般生活で見るようなちょっとした事故の場面」をやったときに起こりやすく、被害も深刻な物になるのだとか。

オチはいかにも関西の映画らしいもので、評価が分かれるとしたらここでしょうね(笑)

 

TSUTAYA系でレンタルもしているそうなので、もしもよろしければ。

オフビートな刑事物「シャドウ・ライン」

この前久々に見返してみたのですが、3年ほど前に放送されたBBCの「シャドウ・ライン」という作品があります。

全8話という短い作品ですがこれがまあ、重いのなんの。

女王赦免で(何故か)選ばれ、出所したマフィアのボスが暗殺される、という、普通ならど派手なオープニングなのに、それをいの一番に見つけた若い警官と、老練というより、たちの悪い警官ゴロな老警官のいやな、実に嫌なやりとりで始まるというオフビートなドラマ。

事件を追う、以前相棒と共に捜査中に銃撃を受けて死にかけ、命はとりとめたもののそれ以前の記憶の一部が無い黒人刑事(相棒は死亡、そして本人は靴箱から謎の札束が出てきて、ひょっとしたら自分は……と疑うことに)と、若年性アルツハイマーの妻を抱え、この仕事を最後に引退を決めているマフィアの幹部がダブルで主役。

特に後者のクリストファー・エクルストン(「ドクター・フー」の9代目ドクター!)は儲け役。
まっとうな常識人でなおかつ怜悧な頭脳を持っているばかりに「雑」な人間ばかりの組織から抜けきれず、最後まで「先読み」をしながらもそれを回避出来ない弱さが上手い。

そんな刑事とマフィア側の事情が二重構造になり、二転三転とかみ合っていく様が素晴らしい。

生き残る者も死ぬ者も、結局誰も幸せにならないまま、システムの奴隷になってすりつぶされていく物語。

劇中に出てくる老齢の「管理者」が「マラソンマン」のマックス・フォン・シドーばりに恐ろしい。

最後に明らかになる真相は「相棒」でも扱われるような話なのだけれど、このラストは日本はおろか、アメリカでも不可能だろうなぁ。

「我々は、仲間を決して見捨てない」

という言葉がこれほど空々しく寒々しく、恐ろしく響く物語は、多分、日本では、いやもう今のアメリカでも作れない。

「人がシステムを腐らせ、腐ったシステムは人を腐らせて延命していく、そして腐った人々はそれを異常だとは思わなくなる」

というあたりがいかにもイギリスです。

これを国営放送が作るんだから……。

CSのAXNやミステリチャンネルなどで放送されることがまたあると思いますので興味のある方は是非。