偉いモン、貰ってしまいました……(上)

「ブレードランナー」という、80年代のSFのビジョンに決定的な変更を加えたエポックメイキングな作品があります。
フィリップ・K・ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を原案に、「薄汚れて退廃した、キラキラしていない未来」を当時若手だったリドリー・スコットが見事に工業デザイナー、シド・ミードの協力によって具現化し、その中で古めかしいとさえ言えるフィルム・ノワールなストーリーを展開させ、最後の最後にひっくり返し、そして……というこの強弱のインパクトに私たちの世代はすっかり魅せられました。
で、何もかもリドリー・スコットとシド・ミードのコンビで生み出された「ブレードランナー」の中で、唯一、そうではない重要な小道具があります。
強力なレプリカントと呼ばれる人造人間を倒す為に作られたという設定の「ブラスター」。シド・ミードがデザインしたのは「高密度のエネルギー体を発射する」という「装置」で口の悪いファンから「まるでドライヤー」のようだ、と言われるものでしたが、リドリー・スコット監督はこれを「違う」として銃の小道具の専門家に即席で作らせたモノを使用しました。
世に言う「デッカード・ブラスター」と呼ばれるそれはステアー社ライフルの機関部と安物の「サタデーナイトスペシャル」と呼ばれながらその堅牢さで愛されたチャーターアームズのリボルバーを内臓し、さらにゴテゴテとならない、スッキリした「未来の銃器」としての美しさを持っていました。
そしてシド・ミードの工業デザイナーとしての魅力の集大成とも言えるポリススピナーと並んでファンの心をガッチリ掴むアイテムとなったのです。
が、銃が主役の作品では無いので、殆ど資料がなく、国内において、劇場で「恐らくステアー社のライフルの機関部を使ってる」と真っ先に見抜いたのは亡くなられたイラストレーターの明日蘭さんことイラコバさん(小林弘隆)だとか。
CS、ディスカバリーチャンネルの人気番組「あやしい伝説」のアダム・サヴェッジ氏は子供の頃に見たこのブラスターを何とか自作しようと四苦八苦してるのを自身のホームページで公開してたぐらいです。
で、当然日本でも色々出ました。「ダンクーガ」で獣戦機隊の持ってる銃とか、モロに影響を受けたデザインのモノもあります。
一番最初にこれを立体化した国内メーカーはアドベンさんでしょう。
元々塗料と素材を扱うメーカーさんでしたが、銃の無可動ガレージキットも出しておりまして。その中のヒット作のひとつがこの「ブレードランナーブラスター」でした。
私もWFに通い始めたあたりで一挺完成品を購入したことがあります。
とっても大事にしていたものを手放すらしく、それに見合ったいい出来の作品でした。
確かスニーカーの箱にちゃんとスポンジを切って埋め込まれてましたっけ。
ですが、当然情報があまりない時代のこと、シルエットは似ていましたが、さて大きさや厚みに関しては「?」がつく代物ではありました。(続く)