エルフでビキニでマシンガン!外伝「エルフでビキニでクリスマス!」その1

エルフでビキニでマシンガン!外伝「エルフでビキニでクリスマス!」

「で、我が国には記念日が足りないと思いました。あと行事ですね」
いきなり先輩がおかしな事を言い出した。

時間を二分ほど巻き戻す。

この発言が飛び出してきたのは俺と先輩の忙しい執務時間が終わって夜遅い…………と言っても午後8時ぐらいなんだが…………のお茶会である。
以前、先輩が俺の世界にいたときにもこれぐらいの時間までお茶してたが、今は俺の隣にはキリノがいる、ってのが以前とは違う点だ。
「そろそろ冬ですね」
先輩はそう話を切り出した。
まあ、たしかにこの3日、このテ=キサスは急に涼しくなった。
秋かな? と思っていたらこれがテ=キサスの冬の始まりなのだという。
それが「おかしなこと」の前触れだった。
「一ヶ月と少しぐらいで駆け抜けていくんです」
「駆け抜けて?」
「ええ!」
先輩は今は女王執務室となった、かつての校長室のソファの上でにっこり微笑んだ。
「来週には大分冷え込んで、二週間ぐらい雪が降って、それから一週間経ったらまた暖かくなっていくんです」
そりゃ随分と駆け足な冬である。
「で、我が国には記念日が足りないと思いました。あと行事ですね」
というわけで冒頭の発言となる。
「なんでそうなるんですか?」
俺はさすがに首を捻った。
「後輩君の世界で学んだのですが、非常時はともかく、普段人は休み無く働かせるより、適宜休みを取らせ、かつ、『特別な日』を設けて、休みを更に分散させるとより効率よく働けると」
「…………どこで学んだんですか?」
「図書館に入ってた本で読みました」
これでブラック企業の社長の啓蒙本でも入ってたら偉いことになってる。
神様、うちの学校の図書館の司書がまともな人だったことに感謝します。
つーか、司書さんまともな人でありがとう。
「で、この国の祝日というのは現在3日しかありません」
「公休日みたいなのはないんですか?」
「月に2回なんです。これを是非週休1日ぐらいにはしたいなーと」
「それは、大事」
こくんとキリノが頷いた。
「それとは別に、『特別な日』としてのクリスマス、ってわけですか?」
「ええ」
と先輩は頷いた。
「色々考えたのですが、『くりすます』と『ばれんたいんでー』はとってもいいお祭りだと思うんです。特に『くりすます』は互いを思いやり、隣人を祝福すると言う意味で!」
「ここの神様的には大丈夫なんですか?」
俺が疑問を呈すると、先輩はニッコリ笑った。
「そこは大丈夫だと思うよー」
暢気な声がテーブルの上からあがった。
サブリナ……正式名称はめんどくさいから書かないが、二頭身のちびっ子カウガールな格好をしたこいつは一種のアンドロイド、俺たちが生きていた時代から100万年後の未来であるこの世界において、旧時代のハイパーテクノロジーを管理する立場であり、同時に今あるこの世界の成り立ちを知っている存在だ。
「ビーちんはビキニつけたおねーちゃんと逞しいおにーちゃんが乱舞するかどっちかがあれば納得するしリティヴィねーちゃんは御布施と人口増加が見込めれば問題ナッシン。他の神々も戦争とか生贄の儀式とかじゃなければ人類が増えるのは大歓迎だし、楽しんでリフレッシュする分には問題ないっしょ。この世界の神様は800万以上いるから今さらひとつふたつ増えてもかんけーないって、あるじ様」
ずいぶんと大雑把だな、おい。
と、ここで俺はちょっと不安になった。
「…………そもそも、先輩、どんな風にクリスマスを理解してるんです?」
「私もそれ、聞きたかった」
こっくんとキリノが頷く。
「え? えーと、まず、華やかに街中を飾り立てて、ケーキを家族で食べて、鶏か七面鳥という鳥類を丸焼きにしたものを食べて、プレゼントを交換して、華やかにダンスしたり歌ったりして、お酒を飲んで、賑やかに過ごす、ですよね?」
俺とキリノは安堵の溜息をついた。
ひょっとしたら別の…………例えば東北のナマハゲ、あるいはヨーロッパではサンタと対になってるクランプス(正式にはサンタの従者で、本来はサンタはよい子にご褒美としてプレゼントを、悪い子はクランプスが捕まえて袋に詰めて何処かに連れ去る、と言われてるそうだ……これはキリノのお祖父ちゃんからの受け売りだが)、あるいは映画にもなった、クリスマスが大嫌いな怪物、グリンチとかまでごっちゃになってたらどうしようかと思っていたのだ。
文明、文化に対する思い込みを解除するのは本当に難しいんだ、これが。
いずれ機会があれば話すけど、これ以外にも色々あった。
「プレゼントはともかく、ケーキはどうするの?」
キリノの表情はやけに真面目だった。
「ああ、それは大丈夫です、ケーキぐらいはこの城でも作れます。鳥は、今、セレルとアレルに命じてダッカ鳥を三羽ほど捕まえにいかせてます」
「え?」
俺の表情が強張った。
ダッカ鳥というのは…………えーと、短く言うと特大のヤンバルクイナみたいに地面を「走る」鳥だ。
俺が見た「小さい」ダッカ鳥で全長4メートル、体高は2メートルは超えていた。
「大物」となると全長15メートル、体高7メートルぐらいあるらしい。
ヤンバルクイナのように臆病ではなく、場合によっては鎧オオカミさえ餌にしてしまうという。
「大丈夫なんですか?」
「ダッカ鳥は魔法使いが付いていけば楽ちんで捕獲できますから。ついでに卵があれば卵も持って帰るようにと伝えてあります」
「…………あとは小麦粉ね」
「いや待てキリノ、あんな大きなもん、どうやって丸焼きにするんだ、そもそもつけダレとかいるだろう!」
「そこは大丈夫。宿直室の床下収納に業務用の醤油が20缶あるのを見つけたから」
「いやまて、なんでそんなものがここにあるんだ?」
「事務長の増村さん、業務スーパーマニアだったみたい。冷蔵庫には30キロのバターと塩、それと胡椒があったわ」
「そういえば、学園祭の時に食い物屋やってて困ったら増村さんとこへ行けとかいう話、聞いたことがあったな……それに何故警備員の部屋に業務用冷蔵庫があるのか不思議だったんだが」
「多分、そういうこと」
「あとは衣装ですね! 白い飾りの付いた赤い帽子と黒いベルトと真っ赤なビキニ!」
「…………先輩、何故そこでまたビキニなんですか?」
「え? 女性がサンタの格好をするならそういう格好でしょう? わたし、コンビニの雑誌で見ましたよ?」
ああ、しまった。図書館以外に世俗にまみれた場所があるのを忘れてた。
「だから、ほら!」
じゃーん!と口で擬音を言いながら先輩は薄くて丈夫な鋼の上からクリアレッドな色で塗装されたメタリックなビキニアーマーを取りだした。
「この前の戦いで使ったサブリナ様のところのビキニアーマーがとっても着心地が良かったんで予備を作って貰ったんですが、こういうこともあろうかと赤くして貰ったんです!」
まあ、この人、つーかテ=キサスの国民にとって、赤青白の組み合わせが遺伝子レベルで「よいものだ」とすり込まれてるので仕方がないが…………黄色が入ればガン○ムだよな、これ。
「あと、これがアンダーです!」
そういって見せてくれたものを前に、俺は思わず目眩を覚えた。
それはビキニアーマーの、というより紐と掌の半分ぐらいの布で出来上がった「一点のみを覆う物」としか表現出来ない代物だった。
「却下」
にべもなくキリノが言った。
「それはだめ、絶対」
「どうしてですかー?」
「こいつの教育及び精神衛生上良くない」
そう言って俺を指差す。代弁してくれて有り難いんだが年上を指差して「こいつ」はなかろう。
だがそれを口にするとまためんどいことになるんで黙っておく。
「何故ですか? ビキニは我々の聖なる衣装ですよ? 後輩君は正しい人です」
「男はケダモノを心の奥と足の付け根に飼ってるの」
本気で首を傾げている先輩と、本気で怒りそうになっているキリノの視線の間に割って入るのはなかなか勇気の要る話だったが、放置してたら本気でどうなるかわからない。
キリノは突発的に何をしでかすか心配だし、先輩は先輩で魔法とか使えるし、第一このふたりが今実質的なテ=キサスの頭脳であり統治者なのだ。
単なる「銃使い」としては調停役を買って出るしかない。
買いたくないけど。
「あー、先輩、残念ながらキリノの言うことが正しいです。俺、先輩がそのビキニつけて目の前をうろつかれると多分色々厄介なことになります」
「…………そうなんですか?」
「はい」
俺は溜息交じりに説明をした。
『第一に俺は健全な男子で、そういう欲望がちゃんとあります、第二に、先輩は美人で、グラマーで、正直言って…………」
なんだ? 今度はキリノの視線が俺に向けて氷点下になってきてるんですが。
「いやまあ、とにかくですね、サンタコスは良いとしても、出来ればもうちょっと、その肌の露出面積の少ないモノにして頂けるとありがたいです」
「たとえば?」
「上は胸の谷間と臍を出さない、下は太腿を出さない。本物のサンタがそうだもの」
とキリノ。
「でもそれでは神様が怒ります。お祭りで手足の露出と、胸の谷間がないというのは良くないです。神々への供物なんですから!」
いっつも思うんだが、ホント、どういう神様なんだよ、いったい!
確か戦の女神だっけ。
「…………では襟元は閉じて、胸の谷間だけ出す」
「腕も認めて下さい」
「じゃあ肘まで手袋」
「太腿も」
「じゃあ膝上まではブーツで」
おい、なんか交渉しながらキリノ、見事に転がされてないか?
本人は「必要とされる最低限の露出だけを認める」ように考えてるようだが、それって……(続く)