EXMOD2 外伝「華社美月の風景」その7(全8回)


☆第7回

「校舎が崩れてる!」
叫んだのはたしか、バスケ部の誰かだったと思う。
「白いコートの少年」が学校に現れ、校舎が半壊する騒ぎが起こったことを美月が知ったのはその時だった。
後にマスコミ報道によると、相手はテロリストで、手当たり次第に爆弾を投げて吹き飛ばした……という話だったが、美月はその時、体育館の中に併設された武道場で稽古をしていて、状況を見ている。
爆発音は無かった。コンクリートが派手に崩れる音もなかった。
大量の土砂が水で一気に流れるような音と地響きだけだ。
校舎はもうもうとした土煙に包まれた。
「近づくな、ここにいろ!」
部員たちに叫んで、美月は校舎を見ながら両手を広げて、興味本位で出て行こうとする部員たちを、他の部の部長や教師たち一緒に押しとどめた。
直感が「あそこに近づいてはいけない」と叫んでいた。
何が起こったのか、という好奇心よりも直感の告げる恐怖が勝る。
その時、もうもうと立ちこめる校舎の煙の中から、人影のような物が校外目がけて跳ぶのを、美月は見たような気がした。
その日、学校近くの病院が同じテロリストに狙われ、建物が爆破されるという事件が起き、その犯人を追った警察の特殊部隊が「海ほたる」で大規模な戦闘を行い、犯人を無事に鎮圧、逮捕したという報道がなされたが、犯人が未成年であるために、以後すべての情報が伏せられた。
学校は3日間休校になったが、それから急ピッチで破壊された箇所を入れ替え部品が入るように解体、運び出された。
理宇によると、美月たちの通う学校の校舎は、大地震による損壊の可能性も視野に入れた最新のユニット式で、金さえかければ、ブロック玩具のように破損箇所を入れ替えてあっという間に元に戻るらしい。
理宇の言葉通り、校舎の破損部位は新しい部品に入れ替えられ、失われた中の設備類を搬入し、元通りに授業は再開された。
魔法のような素早さだ。
改修された部分の床と天井の色が鮮やかでなければ誰も気付かない。
「……大したもんだなあ」
暇つぶしに現場まで来て、その様子を見てぽかんと呟く美月の隣で、それに付き合ってやって来た理宇は首を捻っていた。
「でも、どうしてこんなに早く予算が下りて工事できたんだろ?」
「テロだった、ってことを早く忘れたいんじゃねえの?」
「……そんなとこか、うん。美月にしてはいい考えだ」
「どういう意味だよ!」
その頃には屋上を跳んでいった影のことなど、美月の記憶からはぬぐい去られていた。

 

 

※第6回はこちら
※第5回はこちら

※第4回はこちら
※第3回はこちら
※第2回はこちら
※第1回はこちら