電子書籍版「エルフでビキニでマシンガン!」発売記念掌編・その2

エルフでビキニでマシンガン!外伝「若き女王の旅立ち」中編

言葉の意味が判らず、彼女が翻訳魔法を自分にかけると、やがて言葉の意味が判った。
「ようこそ我が主、このシステムゲートへようこそ。移動先は現在運任せの状態です。移動先を選びますか?……繰り返します」
と、あとは同じことを繰り返した。
彼女は息を呑むほどに驚いた。
エルフの女王たるもの、魔法の扱いはしっているし、彼女自身も魔法を使える。
だから断言出来る。
この門は魔法で作動していない。
別の力……稲妻のような気配を漂わせていた……で動いている。
だがどうやって作動させているのか、彼女にはさっぱり分からなかった。
「移動先を選びたい」
『かしこまりました』
そういうとそれまで向こう側に地下の石壁が見えるだけだった門の中にうっすらと煙のように光が集まり始めた。
やがて、そこには昼間のように明るい風景が映し出される。
映し出された映像は、記録水晶よりもそれは鮮明で、それだけでなく、動いていた。
音まで聞こえてくる。
見たことがない直線で構成され、キラキラ光るガラスで表面を覆われているような建物が無数に建ち並び、その間を見たこともない衣装を纏ったヒト族の老若男女が濁流のように移動し、彼らのそばを馬の無い馬車とでも形容するべき、しかしもっと車高が低くて早く、もの凄い音を立てるものがあちこちにむけて走っている。
中には車輪が前後二個だけで、その間に人がまたがる形の乗り物も見えた。
「こ……ここはどこですか!」
『現在の選択肢Aです、前回と同じ場所は使えないのでランダムに選びました』
「…………」
思わず彼女はゆらりと倒れそうになり、慌てて石壁に手を突いて溜息をついた。
いっそ今着用している執務服を脱ぎ捨てて、ビキニのご加護にすがろうかとも考えるほど、気が動転していた。
見たことも無い風景、というのはこれまでも体験としてあった。
だが、ここまで「異様」な風景は彼女の短い人生でも存在しない。
いや、恐らく亡くなった父母、祖父母、あるいは曾祖父母に尋ねても「存在しない」と言い切られる気がした。
同時に頭の奥に明滅するものがある。
かつて彼女の先祖が持ち込んだ「翼」と「竜をも倒す火球を発射する馬なしの鉄の馬車」の話を。
あれは事実だったのだ。
あの直線で構成された建物、雑然と、しかしある種の規則性を持って黙々と歩いていく人の群れ。
横を恐ろしい速度で走り抜けていく馬の無い馬車のようなものの群れ。
しかも今見ていると、風景はみるみる夜になり、ガラスでできたような建物には煌々と明かりが灯り、人々も特に驚くでなくその横を黙々と歩いていく。
思わずいつも手首に着けている「呼鈴」を使って彼女がここにいるとは知らない城の従者を呼び出し、あるいは城にいる数少ない女性賢者をここに……と思ったが考えを変えた。
はかりごとは密を持って成すべし。
ここに誰かを呼んでも学者たちは好奇心から、大臣たちは常識に反しすぎることから混乱して無限の言い争いを始めることは眼に見えていた。
急がねばならないのは門の機能の解明ではない。
自分が門で何を成すか、だ。
いま、自分は決断し、行動せねばならない。
女王は決断し、判断する職務であり、地位だ。
「…………決断せねば」
彼女は呟いた。
「この世界をもっと観察したい、できますか?」(後編&完結編に続く)