電子書籍版「エルフでビキニでマシンガン!」発売記念掌編・その3

エルフでビキニでマシンガン!外伝「若き女王の旅立ち」後編

はかりごとは密を持って成すべし。
ここに誰かを呼んでも学者たちは好奇心から、大臣たちは常識に反しすぎることから混乱して無限の言い争いを始めることは眼に見えていた。
女王は決断し、判断する職務であり、地位だ。
「…………決断せねば」
彼女は呟いた。
「この世界をもっと観察したい、できますか?」
『はい我が主』
声は滑らかに答えた。
『私に残された跳躍用エネルギーはあと一回分しかございません。周到に世界をお選び下さい。他を見ますか?』
「ええ」
彼女が頷くと、風景が変わった。
今度はぐっと親しみのある、石と土でできた建物、北方のソグディアナの風景として見たことがある丸屋根や、ここよりもっと南方にある国の瓦ぶきに似た屋根が続き、大きな箱のようなものがゆっくりと移動する中、前よりもずっと少ない人数……それでも彼女の国の王都にかつて溢れていた人の数よりも多い……が歩いていく。
先ほどの「馬なし馬車」らしきものが通っていくがこの風景の物は車輪がこの世界の馬車のように大きく、細い。
「ここは?」
『先ほどの風景から約100年ほど前です』
しばらくその風景を見つめ、女王はこの世界は馴染みやすいが、今自分が欲しているものは手に入れられない、と判断した。
それから後、「門」は三回ほど別の世界を見せてくれたが時代が遡るばかりだった。
「一番最初の場所の、更に未来にはいけないの?」
『残念ながらそれを行うにはエネルギーが不足しております』
「四つから選べ、ということね」
『そういうことになります、我が主。力不足をお許し下さい』
「……どれくらい選ぶ時間はあるの?」
『選択状態では殆どエネルギーを消費しません』
「………同じ世界の、違う場所を見ることはできる?」
『はい』
そしてその日から、彼女は表向きは「これまでの激務で体調を崩した」ということにして自室に引きこもることにし、実際は抜け道からこの地下の「門」へ毎日やって来ては「行く先」を観察した。(完結編に続く)

電子書籍版「エルフでビキニでマシンガン!」発売記念掌編・その2

エルフでビキニでマシンガン!外伝「若き女王の旅立ち」中編

言葉の意味が判らず、彼女が翻訳魔法を自分にかけると、やがて言葉の意味が判った。
「ようこそ我が主、このシステムゲートへようこそ。移動先は現在運任せの状態です。移動先を選びますか?……繰り返します」
と、あとは同じことを繰り返した。
彼女は息を呑むほどに驚いた。
エルフの女王たるもの、魔法の扱いはしっているし、彼女自身も魔法を使える。
だから断言出来る。
この門は魔法で作動していない。
別の力……稲妻のような気配を漂わせていた……で動いている。
だがどうやって作動させているのか、彼女にはさっぱり分からなかった。
「移動先を選びたい」
『かしこまりました』
そういうとそれまで向こう側に地下の石壁が見えるだけだった門の中にうっすらと煙のように光が集まり始めた。
やがて、そこには昼間のように明るい風景が映し出される。
映し出された映像は、記録水晶よりもそれは鮮明で、それだけでなく、動いていた。
音まで聞こえてくる。
見たことがない直線で構成され、キラキラ光るガラスで表面を覆われているような建物が無数に建ち並び、その間を見たこともない衣装を纏ったヒト族の老若男女が濁流のように移動し、彼らのそばを馬の無い馬車とでも形容するべき、しかしもっと車高が低くて早く、もの凄い音を立てるものがあちこちにむけて走っている。
中には車輪が前後二個だけで、その間に人がまたがる形の乗り物も見えた。
「こ……ここはどこですか!」
『現在の選択肢Aです、前回と同じ場所は使えないのでランダムに選びました』
「…………」
思わず彼女はゆらりと倒れそうになり、慌てて石壁に手を突いて溜息をついた。
いっそ今着用している執務服を脱ぎ捨てて、ビキニのご加護にすがろうかとも考えるほど、気が動転していた。
見たことも無い風景、というのはこれまでも体験としてあった。
だが、ここまで「異様」な風景は彼女の短い人生でも存在しない。
いや、恐らく亡くなった父母、祖父母、あるいは曾祖父母に尋ねても「存在しない」と言い切られる気がした。
同時に頭の奥に明滅するものがある。
かつて彼女の先祖が持ち込んだ「翼」と「竜をも倒す火球を発射する馬なしの鉄の馬車」の話を。
あれは事実だったのだ。
あの直線で構成された建物、雑然と、しかしある種の規則性を持って黙々と歩いていく人の群れ。
横を恐ろしい速度で走り抜けていく馬の無い馬車のようなものの群れ。
しかも今見ていると、風景はみるみる夜になり、ガラスでできたような建物には煌々と明かりが灯り、人々も特に驚くでなくその横を黙々と歩いていく。
思わずいつも手首に着けている「呼鈴」を使って彼女がここにいるとは知らない城の従者を呼び出し、あるいは城にいる数少ない女性賢者をここに……と思ったが考えを変えた。
はかりごとは密を持って成すべし。
ここに誰かを呼んでも学者たちは好奇心から、大臣たちは常識に反しすぎることから混乱して無限の言い争いを始めることは眼に見えていた。
急がねばならないのは門の機能の解明ではない。
自分が門で何を成すか、だ。
いま、自分は決断し、行動せねばならない。
女王は決断し、判断する職務であり、地位だ。
「…………決断せねば」
彼女は呟いた。
「この世界をもっと観察したい、できますか?」(後編&完結編に続く)

電子書籍版「エルフでビキニでマシンガン!」発売記念掌編・その1

 

エルフでビキニでマシンガン!外伝「若き女王の旅立ち」前編

国中の男子が全て死ぬという「大呪詛」から数年、王と男の王族亡き後、小さな国の独立を外交手腕でなんとか守りぬいたテ=キサスの女王が病に倒れ、あっという間に亡くなられて半年、王女……いや、戴冠式をつい二ヶ月前に終えたのでもはや女王と呼ぶべきか……の姿はこの一週間、王宮からも、バルコニーからも見られなくなった。

彼女はどこにいるのか。

地下にいた。

この国の王宮の歴史は長い。保存魔法のお陰もあって建物自体が千年。その下に広がる空間は数千年の長きにわたって保存されているという。
その一室に彼女は閉じこもっていた。

この国には男子がもういない。

それはこの剣と魔法が支配する世界において、「滅び」の道を真っ直ぐに歩き始めたということに他ならない。
幸い、その後生まれた赤ん坊たちは四歳になる今まで死ぬことも無く育っている。
これはこの国にかけられた呪詛の影響が消えたのか、それとも……という話があったが、昨日、この呪詛の効果範囲の外にいたドワーフの男が、宿屋の女将と「深い仲」になるまでは存命だったことから「変質」したということは分かっている。
だとしたら、数年もしないうちに呪詛そのものが消え去るかも知れない。
若き女王は焦燥を微笑みに押し隠し、大呪詛がこの地にもたらされてからずっと打つ手を城の図書館と古老たちの話の中に求めた。
この年若いエルフの少女が賢明だったのは「過去」のみならず「現在」にも目を向けていたということだ。
あくまでも「過去」の伝説や秘宝は、国民の心を安んじさせる手助けになるだろう、と考えたのである。
彼女はそうやって過去の伝説や記録に「救い」を求めながら、同時に外交政策をテキパキとこなし、「男の居なくなったこの国」に対する諸外国の「保護」という名の支配をなんとか避けてきた。
それが変わったのは十日前。王宮の地下に収蔵された品の目録と、図書室にある書物の一文が一致したからである。
「異世界門」
この世界ではない、どこか別の世界に人を送り出し、この世界で三日。別の世界では半年の間そこに居る事ができるうえ、その世界の物を結界をおいた範囲内で持ち帰れる、というものだ。
嘘か誠か、これまで二回、この王国の危機を彼女の先祖はこの門を通じて入手したもので救ったと書物には記録されていた。
ひとつは空を飛ぶ翼。
もうひとつは地上を恐ろしい速さで、馬なしで疾走し、鎧すら貫く魔法の矢をはじき返し、古竜すら撃ち倒す火球を魔法なしで発射する馬車。
どれも王国の危機を逆転させ、その後に壊れて(あるいは壊されて)廃棄されたという。
信じがたいが事実だろう、と今現在、若き女王は考えてる。
なぜなら、今目の前にその宝物があるからだ。
発見したのは四日前。
その巨大な門に彼女が手を触れると、全て精緻に加工された金属の組み合わせで出来たものが青白く輝き、滑らかな女性の声で何事かを告げた。
言葉の意味が判らず、彼女が翻訳魔法を自分にかけると、やがて言葉の意味が判った。
「ようこそ我が主、このシステムゲートへようこそ。移動先は現在運任せ(アト・ランダム)の状態です。移動先を選びますか?……繰り返します」
と、あとは同じことを繰り返した。
彼女は息を呑むほどに驚いた。
エルフの女王たるもの、魔法の扱いはしっているし、彼女自身も魔法を使える。
だから断言出来る。
この門は魔法で作動していない。

(続く)

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10月の15日に沖縄でコミコンがありました

去年もネタにしたのですが、沖縄のキャンプフォスター内でコミコンがありまして、そのお手伝いをささやかですがさせて貰いました。
どんな感じだったかはこちらに。
何処の国の、どの立場の人間か、なんてこと関係成しにアニメとか漫画とか映画とか造形とか好きな人たちでいいじゃない、というイベントで、取っても楽しかったです。来年どうなるかは不明ですが、やれたら今回はお休みした個人ブースをまた出そうかと思っています。