リラム販促用短篇その2「刃の果実」

リラム~密偵の無輪者~外伝・刃の果実:神野オキナ

神々と魔法が去った世界の片隅。
金髪を高くまとめた長身の戦古貴人族{戦古貴人族:ヴォルエルフ}の侍女リンザを、勝るとも劣らぬ美貌の彼女の主、東圏{東圏:ヒウモト}のサムライ、レイロウはそっと寝台に押し倒した。
「あ、あの……ご、ご主人様……せ、せめて湯浴みを……」
「いいんだ」
戸惑う自分より頭ひとつ背の高い侍女の首筋に唇を這わせながら、レイロウはこともなげに言った。
「お前の匂いはいい。どんな女よりいい匂いがする。戦士の匂いだ」
「ご、主人様……」
顔を真っ赤にするリンザの上半身を寝台に横たえ、レイロウのしなやかな指が侍女服の合わせを開く。
張りのある豊満な乳房が揺れて、僅かに左右に流れる。
衣服を脱ぎながら彼女に覆い被さるレイロウの身体は白い肌が細く引き締まり、しなやかな獣のようだ。
「お前は、僕の女だ」
青年が囁く、それだけで、普段は刃の様に研ぎ澄まされているリンザの美貌が蕩けた。
かつては北方辺境の女位主{女位主:フィルヴァー}として君臨していた女戦士でもある彼女の肢体は、青年の指と唇にたちまちに汗ばみ、わななく。
「レイロウ、さま……」
広い寝台の上で戦古貴人族{戦古貴人族:ヴォルエルフ}の美女は一刻あまり続いた主からの愛撫のあと、下着の紐を解いて片足に絡めたまま、優しく微笑み、両腕をのばした。
寝台の上に引き締まった女の長い脚を曲げて広げ、レイロウはリンザの中に押し入る。
甘い声をあげた瞬間、リンザはレイロウを迎え入れたまま抱きしめ、寝台の上を転がると、ふたりが寝ていた場所に、毒塗りの短剣が数本、暗闇の中から突き立った。
寝台から落ちながら、レイロウは寝台の下に隠してあった短槍を引き抜いてリンザとまた上下を逆にしながら振り向き、飛びかかってきた別の相手の心臓を貫いた。
そして、リンザは床板を拳で叩いて外し、中に納めてある大剣を引き抜く。
銀の光が尾を引いて、五回の瞬きほどの時間が過ぎるころ、寝室には四つの暗殺者の死骸が転がった。
「片付けます」
と大剣の血を寝台の布で拭い、部屋を出ようとしたリンザの手を、レイロウは掴んだ。
「あとでいい。久々の戦いで昂ぶってる」
「……はい」
頬を赤らめながらリンザは血臭の満ちた部屋で、乱れた服を改めて脱ぎつつ訊ねた。
「東圏{東圏:ヒウモト}の誰かに雇われたんでしょうか?」
「多分、兄上に媚びを売りたい商人だろう。腕が悪すぎる…………でも、ひょっとしたら、嵐が来る前触れかもしれないぞ。そうなら少しは楽しくなるが」
再びリンザと唇を重ねつつ、美しい東圏のサムライは戦場で敵にあったときのように、無邪気で甘く、危険な笑みを浮かべた。

 

(終劇)