本当に映画化できるのかしら?

去年、アメリカのSF小説界隈で話題になった事件と言えば「ゲームウォーズ」の映画が正式に決定した、ということでしょうか。

最初に日本に紹介された作品イメージがこれです。

CIA☆こちら映画中央情報局「ゲームウォーズ映画化!」

機龍とガンダムが戦い、ミネルヴァXと勇者ライディーンが援護しようとしていて、倒れ込んでいるレオパルドンの上を飛翔する青年の姿は「ウルトラマン」の科学特捜隊を彷彿とさせるカラーリングのスキンタイトなスーツ……。

正直よくある「日本でも良くある、サブカルなひとたちがアニメを適当にアイコンとして食い散らかしたいけすかない作品なのかしら」というのが第一印象でした。

で、とりあえず物は試し、ということで購入してみたんですが……。

この作品、ガチでした。ガンダムにRXー78以外の機体があるコトも、劇中登場するのが2号機だと言うことも、ミネルヴァXが自らの意志を持って動くロボットだということも、レオパルドンがマーベラー形態から変形することも、この作者は全て知った上で、80年代を愛して止まない心が溢れてくるような作品でした(ガンダムや他の日本作品の中には70年代のものもありますがアメリカには80年代にその多くが輸入されているので、彼らにとっては80年代の作品なのです!)。

お話は典型的な「ホワイト・トラッシュ」の少年の日常から始まります。

今のアメリカでも貧困者は固定資産税と市県民税を支払わずに住むようにキャンピングカーで生活する人たちがいますが、それがさらに巨大化、深刻化して上下左右に溶接でキャンピングカーを繋いで、今は無きクーロン城のようになった、というような場所で、両親もおらず、身持ちの悪い叔母の家で汚れたイヌのように扱われているのが主人公。

ただし彼には夢があります。現実の世界で言う所のジョブスとビル・ゲイツを足してハワード・ヒューズをかけたような大富豪が、今や日常の一部になった仮想現実世界「オアシス」の中に彼の遺産の全てを隠したと遺言を残し、それを手に人生一発逆転を狙う、という夢が。

その大富豪。ジェームス・ハリデーは80年代オタクで、彼の遺産を狙う者は彼の残したヒント…………自叙伝から好きな物リスト、インタビュー画像に至るまで……をチェックして何とか推理して彼の残した遺産を手に入れようとします(つまり大富豪の遺産を追うためには80年代オタクになるしかない!)が、彼の構築したネット世界は広大で、そしてそこは「課金制」の部分が殆ど。PCを起動させるのにも自転車を使った自家発電で電力を供給するしか無い主人公にとってそれは余りにも無謀な試みでした。

ですが、彼はふと気づきます。

「実はこのオアシスの基本となる無課金空間に最初の「鍵」があるのではないか」と……そこから始まるのは冒険であると同時に、プア・トラッシュの世界から抜け出る少年の出世物語でアリ、友情物語であり、ボーイ・ミーツ・ガールの物語でもあります。

脇を固めるのは主人公・パーシヴァルをしばしば出し抜く実力と計略の持ち主の少女、陽気で優しく、いつでも主人公の味方になってくれる黒人少年、そして色々な紆余曲折があって彼らに協力する日本人の兄弟。

中でも大富豪ハリデーの唯一の親友にして理解者の老人が素晴らしい。ジョブスにとってのウォズアニックであり、「ジェラシック・パークの」R・アッテンボローであり、「指輪物語」のガンダルフのようなこの人物の、物語の中に挿入されるささやかな「冒険」は主人公たちとは違った意味でのはらはらドキドキと爽快感があります。

ところがこの『宝探し」は今や世界に必要な一部となった「オアシス」を我が物にせんと目論む多国籍企業も介入していて…………と来るから自体は素直に行かず、また手に汗握る展開も出てきます。

その中でこの世界にとって「オアシス」が如何に重要か、世界がどれほど荒廃しているか、価値観が変わっているかがしっかり描写されていくのが素晴らしい。

クライマックスは80年代VS90年代という激突。取り合わせと戦い方に、私みたいな古いオタクは涙が出そうになります。

最後にカタを付けるのが「銀色の巨人」というところがまた。

映画化されるのは嬉しいのですが、本当に幾つもの80年代作品、歌やテレビ番組は言うに及ばず、「ウォー・ゲーム」から「モンティ・パイソン・ホーリー&グレイル」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はもちろんのことエヴァンゲリオンから「東映版」の「スパイダーマッ!」まで…………の権利をクリアするのがむずかしいかも知れませんがそこは各社、融通を利かせて欲しいものですねー。