年末に速水螺旋人はいかが?

速水螺旋人という漫画家さんは不思議な人です。

地元でずっとお世話になっている先輩から「こういう面白い作品世界を描き続けている人がいるよ」と言われて同人誌を持ってこられたのはかれこれ10年ぐらい前。
その時点でもう今の速水螺旋人さんでした。

自分の世界観が確固として存在するタイプの物作りをする人というのは10年ぐらいでがらりと変わる(次の世界を作り始める等)か、自分自身の世界観から絶対に出ないで戦い続けるか、という二択をする人が多い印象なのですが、速水さんはそれから緩やかに「別の世界」と「いつもの速水螺旋人」の世界を区分けするのでは無く、二重に重ねて描いて、少しずつ領土(活躍範囲)を広げていきました。

後にふとしたご縁でご本人にお会いすることになりましたが、これがまたご本人の漫画からひょいと抜け出てきたような飄々とした楽しい方で。

ただ、キャンプフォスターの海兵隊主催のコミコンでソ連国旗を広げて同人誌を売るあたり、やっぱり描く漫画のように一筋縄ではいかない人です(笑)
作品の中でも単に楽しい、面白い、勇ましい話だけではなく、さりげなく差別や戦争の起こす人心の腐敗や「人のどうしようもない部分」などを描いてますし。

今のところの一般的な代表作はやはり「大砲とスタンプ」でしょう。

兵站という、「直接戦闘をしてはいけない」という地味で目立たないながら、実際にはとても重要な部署を、気負いもてらいも外連味もなく、淡々と描いていて、美味しい日本酒のようにつるつると読んでいけるのはサスガの手腕です。


「大砲とスタンプ」は連作短篇、という風情ですが、読み切りで淡々と、ひたすらダジャレのようなギャグを連ねた実験作が「スパイの歩き方」


往年のあずまひでおの様な不条理レベルのギャグを淡々と並べていって「ちょうど時間となりました」とばかりにひょい、と終わるような連作型、しかし、どこか品があって、あずまひでおよりも遥かに洗練された空気がまた速水螺旋人というべきでしょうか。

で、「大砲とスタンプ」番外編のような「しんどい戦争の間をちょこまか生き抜く人々」を描いている「代書屋レオフリク」と宇宙時代の脅威を人三化七(にんさんばけしち)どころか、本当に妖怪変化の力まで借りて生き抜く世界を描いた、人を食ったような微笑ましい短篇「ラクーンドック・フリート」が入っている楽しい幕の内弁当みたいな短編集がこちら。


年末年始、ほけっとした時にコタツにあたりながら読むには最適な「美味しい水のような日本酒」としていかがでしょう?

あと、ついでによろしければうちのほうで戦争を扱ってるこの作品のコミカライズ版もどうぞよろしくお願いします-。